競売物件で稼いでみた 経験談から学ぶ超ズボラ不動産投資実践術
第1章 競売物件とは
競売物件というと自己破産した人の家を競りにかけ、最も高額の指値をした人が競り落とす、それぐらいのぼんやりとした認識はあった。
しかし20代の小娘(筆者)にはドラマの世界の話で、自分とは無縁だと考えていた。
競売物件を説明するとローンを払えなくなったことで、担保となっていた土地や家などの不動産を裁判所を通じて強制的に売却された物件のことである。
つまり、ローンで不動産物件を購入した人は誰でも、その不動産が競売物件になる可能性があるとも言える。
第2章 私が競売物件を買うことになったわけ
ではなぜ不動産投資や競売物件とは縁遠かった私が競売物件を買ったのかだが、きっかけは単純だった。
実家裏の家が、競売物件として販売されたからである。
裏の家には世帯主の妻となるAさんが一人暮らしをしており、実家の母親に「思い入れのある家なので、できれば知っている人に購入してもらいたい」と悩みを打ち明けた。
すると母が「うちの娘に買わせて住まわせたらどうか」と提案してしまったのである。
母からは「結婚しないならAさんの家を買いなさい」と半ば強制的に言われ、私も特に将来の目標などもなかったので安請け合いしてしまい、競売物件を購入することになった。
とは言え、当時の私は家の購入方法すら満足に知らなかった。
まして競売物件など、どこから幾らで買えばよいのかすら、わからない状態だったのである。
そこで私は父に相談した。
父は「素人が手を出すものではない」と猛反対であった。
ところが母が「娘が隣に住んでいればなにかと便利」という説明にあっさりと折れ、同意してしまった。
かくして私は母とともに「競売物件を落札する」というところから、勉強を開始した。
競売物件を詳しく知るには、裁判所で調べる必要があることも知らなかったのだ。
その結果、素人判断ながらAさん宅は600万円程度は必要だということはわかった。
となる次は資金繰りである。
複数の金融機関をあたったのだが
・競売物件は現金で即支払う必要があること
・落札できるかどうかもわからない物件には融資できないこと
を学んだ。
知識不足、認識不足を改めて思い知らされた次第である。
ただ私はそれほど落胆しなかった。
昼間は福祉の仕事、週末は水商売のアルバイトを行っていたこともあり、20代女子の割にはそこそこ貯金があったからである。
預金や個人年金の解約など、かき集めた資金はおよそ500万円。
幸いAさんの家は思った以上に安く設定されており、なんと自己資金の500万円で無事落札することができた。
こうして私は20代にして、全財産500万円と引き換えに田舎の一軒家の主となった。
第3章 買ったはいいが、退いてくれない
落札手続きが完了し、私は母と二人で落札できたことをAさんへ報告した。
Aさんの自分のことのように大変喜んでくれた。
ところがここで大問題が発生する。
Aさんが他に行くところがない、家賃を支払うのでこのまま家に住まわせて欲しいと言ってきたのである。
もし競売物件を購入するなら、こうした事態も想定しておくべきである。
実際、Aさんの反応は想定していた。
そもそも競売物件に一人で家に残っている状態だったので、行く宛がないだろうとの予測は付いていたのである。
そこで「次の引越し先が決まるまでは賃貸として貸すけど、片付けはある程度行って欲しい」と回答した。
具体的な家賃はAさんと父との協議で決まり、当面月額3万円で貸すことが決まった。
毎月3万円の家賃はしっかり受け取れた。
が、半年ほどして自分が置かれている状況の理不尽さに気付いたのだ。
いくら家賃を受け取れていると言っても、私は本来借りなくて良いはずの借家の家賃を払っており、しかも賃貸だとこの先いくら家賃を支払っても自分のものにはならない。
このまま続けることはできないと考え、私は父へ相談することにした。
実は父はAさんと良好な関係を築きつつも、引越しが実現できないかを地道に交渉してくれていたのである。
私から父への相談が大きなきっかけとなり、父がAさんを説得してれ、Aさんは退去を決めてくれた。
第4章 家の中には他人の思い出がいっぱい
その後Aさんは、3ヶ月ほどしてからひっそりと引越していった。
女性一人の引越しは大変だろうとの判断で、不要なものは全て父が片付けるという条件を提案していたようだ。
そのため、私が購入した家には本当に不必要なもので溢れていた。
それらを父と母が手分けをして片っ端から片付けてくれ、家を空にしてくれた。
決して綺麗だとは言えない、古い一軒家である。
しかしながら荷物が片付くと想像以上に広く、自分が引越してからも「広すぎる家」で自由気ままな一人暮らしが始まるかと思いきや、現実はそうはいかなかった。
引越したことで職場は遠くなり、通勤で朝は早く、帰りは遅い生活となる。
さらに目の前が実家だったこともあり、親がよく様子を伺いにくるので、おいそれと彼氏も呼べないのだ。
これでは同居しているのと変わらない・・・
こうした環境が自分に絶えられなくなってきたのである。
そこでまずは通勤負担を解消すべく勤務先を退職し、近隣の同じ業種の職場へと転職した。
これで通勤の負担はほぼ解消した。
ただ、職住隣接で親と同居している状況は更に濃厚になり途方に暮れていたところ、新しい職場が障害者のグループホームを増やす計画があることを知ることになる。
そこで自分が購入した一軒家をグループホームとして借りないかという提案を、新しい職場の理事長に行ったのだ。
下見をした理事長の評価としてはグループホームとしては少し狭いということで、難色を示していた。
が、専業主婦の母親が栄養士だったこともあり、料理も作ってくれる世話人を確保できる点を大変気に入ってもらえ、契約が実現した。
ではグループホームとして自分の家を貸した場合、自分の住まいはどうなるのかと疑問に思った方もいるだろう。
実は新築の家を建てる計画もしていたのだ。
自己資金で家を買ってしまうと、二軒目は意外と恐怖心はなくなる。
新築であれば住宅ローンも組めるし、給与以外にグループホームからの家賃収入も入ってくるとの算段があればこその話である。
ちなみに毎月のローンは約6万円。
グループホームからの家賃収入が5.5万円なので、私は実質月5千円の負担で新築の家に住むことができたのだ。
まとめ:あれから13年
私が競売物件で家を購入し、更に新築の家まで購入してから13年が経ちました。
私は結婚し、現在1児の母である。
現在も同じ職場で仕事を続けながら主婦を行っている。
私の母も今やベテランの世話人となった。
グループホームに貸している家はもともと古い家だったが、安価な家賃設定にしたことで、グループホームを維持する上で必要なメンテナンスや修繕は、全て会社が負担してくれている。
しかも増築工事まで、会社負担で行ってくれた。
500万で手にいれた競売物件で、私は13年間で800万円以上稼いだ計算になる。
思えば何の計画もなく、知識もなく、いきあたりばったりで競売物件を買った。
しかも20代の女性がである。
その時から自分の価値観が変化した気がする。
今のところ、具体的な展望がある訳ではないけど、自分の人生としての経験値をあげるため、また思いっきた買い物をしたいと考えられるようになった。