不動産広告の歴史を知る【第2回】高度成長期の不動産広告:団地ブームと大規模開発の時代

目次
- はじめに
- 高度経済成長と住宅需要の急拡大
- 公団住宅・団地ブームの到来
- 都市開発と不動産会社の躍進
- 広告媒体の多様化
- テレビCM・ラジオ・雑誌の進出
- “家族の団欒”を訴求する映像広告
- 団地広告の実例とキャッチコピーの傾向
- 「最新設備」「モダンライフ」のアピール
- 団地で叶える共同生活の楽しさ
- 光と影:原野商法や誇大広告の増加
- ニュータウン人気の裏に潜む問題
- 規制への流れと業界の自己浄化
- まとめ
1. はじめに
どうも、RealtyBank代表の川上です。シリーズでお送りしている「不動産広告の歴史」、今回は高度成長期をテーマにお話ししていきます。戦後復興が一段落し、日本は1950年代後半から70年代にかけて爆発的な経済成長を遂げました。「三種の神器」と呼ばれたテレビ・洗濯機・冷蔵庫が普及し、人々の暮らしも豊かに。そんな勢いのある時代を背景に、不動産広告もがらっと様変わりしていくんです。
特に注目したいのが団地ブーム。今でも「団地」って言葉を聞くと昭和の香りがただよいますけど、当時は最先端のモダンライフを象徴する存在だったようです。その団地や新興住宅地をいかに魅力的に見せるか、広告業界が腕を振るっていた時代なんですね。というわけで、早速見ていきましょう!
2. 高度経済成長と住宅需要の急拡大
■ 公団住宅・団地ブームの到来
戦後の焼け野原状態から急速に復興し、1955年(昭和30年)頃から日本は本格的な高度経済成長期に突入します。工場や企業がどんどん増えて都市に労働者が流れ込み、人口が集中して大都市圏が急拡大。それに伴って住宅需要が一気に高まりました。
この流れで注目を浴びたのが、公団住宅(現在のUR賃貸)や大規模開発団地でした。鉄筋コンクリート造の集合住宅は、戦後のバラック暮らしから見れば画期的な快適さ。団地には上下水道はもちろん、ガスや電気が整備され、広場や公園といった共有スペースも充実していました。広告でも「最新鋭の設備」「安全で清潔な生活空間」といったフレーズを大々的に打ち出し、特に若い夫婦や家族層の心を掴んでいきました。
■ 都市開発と不動産会社の躍進
また、民間の不動産会社も大規模にニュータウンを開発して、分譲住宅や分譲マンションを供給するようになります。例えば「多摩ニュータウン」とか「港北ニュータウン」とか、首都圏や近畿圏を中心に“○○ニュータウン”が続々と誕生した時期ですよね。これらのプロジェクトに参加した不動産会社にとって、広告戦略は欠かせない存在でした。「こんな広々としたところで、計画的に整備された美しい街並みで、新しい暮らしが始まりますよ!」と盛んにPRしていたんです。
3. 広告媒体の多様化
■ テレビCM・ラジオ・雑誌の進出
高度成長期はメディアの発達期でもありました。1953年にNHKがテレビの本放送を始め、民放も続々開局。60年代に入るとテレビが普及し、広告の主戦場が新聞やチラシからテレビへとシフトしはじめます。不動産会社や住宅メーカーもテレビCMを打つようになり、視聴者の心を直接つかむ映像表現を駆使し始めたんですね。
ラジオCMや雑誌広告も盛んで、特に女性誌や総合週刊誌には「理想のマイホーム」特集が多く組まれていました。昔の雑誌を見ていると「今こそマイホーム!人気エリア徹底比較」とか「夫婦で叶える快適な団地ライフ」みたいな見出しが目に留まりますよ。こうした特集ページは、企業の広告がたくさん入っていて、まさに不動産広告の宝庫だったんだろうなと思います。
■ “家族の団欒”を訴求する映像広告
テレビCMで特に印象的なのが、団地や分譲住宅で暮らす家族の微笑ましいシーンを見せるという手法です。夕飯時にリビングでみんなが笑顔で団欒していたり、週末に団地の広場で子どもが遊んでいる様子を映したり。いま見ればベタかもしれませんが、当時は「自分たちもこんな生活が送れるんだ!」という夢を消費者に与える強力なビジュアルメッセージでした。
台所が最新のシステムキッチンとか、浴室が清潔で広々しているとか、設備面もしっかりアピールすることで「こんな暮らしをしたい!」という購買意欲を高めるわけですね。広告コピーも「未来型住宅」「家族が集まるゆとりの団欒空間」など、前向きなキーワードが並んでいた印象です。
4. 団地広告の実例とキャッチコピーの傾向
■ 「最新設備」「モダンライフ」のアピール
高度成長期の不動産広告でよく目にするのが「最新設備」「モダンな暮らし」「ゆとりの間取り」といったフレーズ。今でいうと当たり前の設備でも、当時は画期的なものが多かったんですよ。ユニットバスや内装のクロス貼りなんかも珍しかった時代なので、広告で「最新の洋風バスルーム完備」なんて書けば、一気に注目を集めたわけです。
昭和30~40年代にかけては、それまで畳中心だった部屋に洋室(フローリング)が登場するようになり、これも当時は「モダン」「ハイカラ」と言われてましたよね。広告では洋室のリビングでソファに座る家族のイラストや写真が使われたりして、まさに先進的な生活を象徴していました。
■ 団地で叶える共同生活の楽しさ
もうひとつ特徴的なのは、団地やニュータウンならではの“共同生活のメリット”を強調する広告です。「敷地内に公園やショッピング施設が整い、コミュニティがしっかりしているから子育てに安心!」みたいなアピールですね。これは現代のマンション広告でも「共用部充実」「コミュニティスペース完備」みたいな訴求に引き継がれていると思います。
公団住宅などでは、子どもたちが中庭で遊ぶ写真や、住民同士が交流するイベントシーンを広告に載せて、「ここに住めば楽しい仲間がいる」「都会の孤独から解放される」といったイメージを打ち出していました。これは当時の「みんな一緒に豊かになろう!」という高度成長の空気感にもマッチしていたんでしょうね。
5. 光と影:原野商法や誇大広告の増加
■ ニュータウン人気の裏に潜む問題
とはいえ、この時代も“裏”があります。都市近郊の分譲地や団地は人気だった反面、もっと郊外や山林地帯を「将来開発予定!」と謳って売りつける「原野商法」なんかも横行しました。実際は開発の見込みなんて全然ないのに、広告では「これからインフラが整う大注目エリアです!先行投資にどうぞ!」と煽るわけです。
購入してみれば道路も上下水道もなく、アクセス最悪の山奥…なんて話も珍しくありませんでした。こういう誇大広告が増えるほど、消費者を守るための法規制の必要性が叫ばれるようになり、徐々に公正取引委員会や関係団体が動き出したのがこの頃からです。
■ 規制への流れと業界の自己浄化
高度成長期終盤には、こうした不動産広告の乱れを是正しようと、政府や業界団体が動き始めます。先の第1回でも触れたように、景品表示法や不動産公正取引協議会(首都圏不動産公正取引協議会など)による自主規制が少しずつ整備されました。
一方で業界内部からも「消費者の信用を失っては長続きしない」という意識が芽生え、大手を中心にコンプライアンスを重視する流れが生まれます。こうした変化は後に訪れるバブル期~バブル崩壊までを通じて、さらに進んでいくことになるんですね。
6. まとめ
高度経済成長期の不動産広告は、まさに日本の住宅事情が“大量供給”の時代へと突入していく様を映し出しています。団地やニュータウンが「夢の象徴」だったり、テレビCMや雑誌広告がどんどんカラフルになっていったり。そこには「豊かさ」をみんなで手に入れようとする熱気がありました。
でも同時に、悪質な誇大広告や原野商法もはびこり、業界の負の面も強まっていきます。こうした状況が規制強化や業界の自己浄化を促し、次のステージへとつながっていくわけですね。
次回は、いよいよ不動産と切っても切れない“あの時代”――バブル期に焦点を当ててみたいと思います。地価が青天井に上がり、豪華絢爛なマンション広告が乱立したあの頃、いったいどんな世界だったのか? どうぞお楽しみに!
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