不動産広告の歴史を知る【第4回】インターネット・SNS時代の不動産広告:急速なデジタル化と多様化

目次
- はじめに
- バブル崩壊後の不動産広告事情
- 地価下落で生まれた「実需志向」
- 紙媒体からデジタルへの橋渡し期
- インターネット普及とポータルサイトの登場
- SUUMO、HOME’S、アットホームなどの影響
- 写真・動画・VR内見による臨場感アップ
- SNS・YouTube・TikTok…新たな波
- 若年層を狙うSNSマーケティング
- 物件動画の内見体験が人気に
- 広告規制の整備と「不動産の表示に関する公正競争規約」
- 消費者保護と広告表現のバランス
- 景品表示法と合わせたチェック体制
- まとめ
1. はじめに
こんにちは。RealtyBank代表の川上です。シリーズ「不動産広告の歴史」もいよいよ終盤。前回までで戦前~戦後復興期、高度成長期、そしてバブル期と見てきましたが、今回はバブル崩壊後から現代にかけての不動産広告についてです。
バブル崩壊後、日本の地価は下落し、消費者マインドも大きく変わりました。そんな中、インターネットの急速な普及が不動産業界に大きな影響を与えます。紙のチラシや雑誌広告が主流だった時代から、ウェブやSNSを活用した広告へ…。ここ20~30年で一気にデジタル化が進んだんですよね。今回はその流れを詳しく追っていきたいと思います!
2. バブル崩壊後の不動産広告事情
■ 地価下落で生まれた「実需志向」
バブルが弾けた1990年代前半以降、不動産市場は大きく冷え込みます。「土地は必ず値上がりする」という神話は打ち砕かれ、投機目的の買い手が激減。結果として、不動産を「投資商品」ではなく「実際に住む家やオフィス」として購入する人が増えていくわけですね。
当然、広告表現も豪華さや未来の値上がりを煽るような路線は通用しなくなり、「生活のしやすさ」「価格の妥当性」「立地の利便性」といった実用的な訴求が重視されるようになりました。「駅から徒歩○分」「周辺のスーパーや病院」「間取りの機能性」など、いま当たり前に見られる情報が広告のメインになりはじめるんです。
■ 紙媒体からデジタルへの橋渡し期
90年代はまだインターネットが今ほど普及していなかったとはいえ、徐々にパソコン通信やWebサイトが姿を見せ始める時代。大手不動産会社の中には、ホームページを開設して物件情報を掲載する先進的な動きもありましたが、当初は「インターネットなんて若者の趣味」くらいの認識も強かったと思います。
それでも、電子メールでお問い合わせが来たり、オンライン掲示板で物件情報をやり取りしたり、少しずつデジタルへの移行が始まっていたんですよね。ただ多くの会社はまだ紙媒体の広告(折り込みチラシ、情報誌、住宅情報誌など)がメインでした。
3. インターネット普及とポータルサイトの登場
■ SUUMO、HOME’S、アットホームなどの影響
2000年代に入るとADSLや光ファイバーが普及し、一般家庭でも高速インターネットが当たり前になってきます。これが不動産広告に与えた影響はすさまじく、従来の紙媒体からネット媒体への転換が一気に進みました。
特に大きかったのは、不動産情報ポータルサイトの存在。リクルートが運営するSUUMO(当時は「住宅情報ナビ」「スーモカウンター」など複数サービスがあった時期も)、ネクスト(現ライフル)のHOME’S、アットホームなどが代表的です。これらのサイトに物件を登録すれば、消費者がエリアや間取り、価格などの条件で一括検索できるようになり、「物件探し=ポータルサイトを見る」がスタンダードになりました。
■ 写真・動画・VR内見による臨場感アップ
ネット広告の強みは、なんと言っても「情報量を増やせる」こと。間取り図や外観写真、室内写真を何十枚でも載せられるし、動画やVR(バーチャルリアリティ)内見も対応可能です。これによって、紙の広告では伝えきれなかった物件の雰囲気や実際の広さを、よりリアルに感じられるようになりました。
VR内見はまだ発展途中なところはありますが、コロナ禍を経て一気に需要が高まりましたね。「現地に行かなくても、ぐるっと360度室内を見られる」ってメリットは大きいです。最近ではスマホのVRゴーグルでバーチャル内見するなんて手法も普及して、物件広告の世界がどんどん進化しているなと実感します。
4. SNS・YouTube・TikTok…新たな波
■ 若年層を狙うSNSマーケティング
さらに時代が進んで、2010年代から現在にかけてはSNSが爆発的に普及。Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどが生活の一部になり、近年ではYouTubeやTikTokも主流のSNSとして存在感を放っています。不動産広告もこの流れに対応し、SNS上で物件情報を発信したり、DM(ダイレクトメッセージ)で問い合わせ対応をしたり、といったスタイルが増えてきました。
特にInstagramは“写真映え”に強いプラットフォームなので、おしゃれな内装やリノベ物件を紹介するのにピッタリ。若い世代を中心に「こんな部屋に住みたい」「DIYでこんな風に改装したい」といった憧れを刺激する効果が高いんですよね。ハッシュタグ検索で簡単に物件やインテリアを探せるし、企業アカウントをフォローして最新情報をキャッチするのも当たり前になりつつあります。
■ 物件動画の内見体験が人気に
YouTubeやTikTokも見逃せません。最近は不動産会社の公式チャンネルや、個人の不動産エージェント、YouTuberが「ルームツアー動画」をアップしています。実際に部屋を歩き回りながらポイントを解説してくれる動画って、写真や文字情報以上にリアルで分かりやすいんですよね。
TikTokのショート動画で手軽に物件の雰囲気を見せて、「気になった人は問い合わせてね!」と誘導するパターンもあります。こうした動画による内見体験は、特に若年層や忙しいビジネスパーソンに好評で、SNSと動画の相性の良さを実感する事例が増えてきています。
5. 広告規制の整備と「不動産の表示に関する公正競争規約」
■ 消費者保護と広告表現のバランス
ここまでインターネット時代の広告の可能性を語ってきましたが、一方で表現の自由度が増した分、「誇大広告」や「虚偽表示」のリスクも大きくなりました。写真を加工しすぎて実際とまるで違うとか、SNSで無責任に「ここは絶対値上がりする!」なんて言っちゃうケースも見受けられます。
こうした不当表示を防ぐために、日本では「景品表示法」や「不動産の表示に関する公正競争規約」というルールが存在しますよね。特に不動産広告に関しては、最寄り駅からの徒歩分数の計測方法や「新築」「未使用」「リフォーム済」といった用語の定義を厳密に定めています。違反すると行政処分や罰金などのリスクがあるため、広告を制作する現場は神経を使っています。
■ 景品表示法と合わせたチェック体制
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、不動産以外の広告でも適用される一般的な法律ですが、不動産業界にはさらに公正取引協議会(首都圏不動産公正取引協議会など)を中心とした自主ルールがあります。表示可能な文言や注意すべき表記が細かく規定されていて、例えば「駅徒歩○分」は80mを1分と換算して端数は切り上げる、とか「徒歩10分圏内」と書いていいのは実際に800m以内、とかですね。
こうしたルールが厳格にあるおかげで、海外に比べると日本の不動産広告はかなり正確性が高いと言われています。「駅から徒歩5分」と書かれていれば、おおむね信頼できる基準があるわけですから。ただ、その分自由な表現やイメージ訴求に対しては窮屈に感じる声もありますね。広告を作る側としては、ルールを守りつつ魅力を伝える工夫が求められるわけです。
6. まとめ
今回は、バブル崩壊から現在に至る不動産広告の変化をざっくり振り返ってみました。地価下落による実需志向の高まり、インターネットやSNSの普及による広告媒体の急速な拡大、そして厳格化された広告規制とそれに伴う業界の取り組み…。ここ30年ほどの間に不動産広告の世界は大きく様変わりしています。
今ではVR内見や動画で物件をチェックして、SNSで口コミを調べて、オンラインで商談予約をする、なんて流れが一般化しつつありますよね。これから先、AIやメタバースといった次世代技術がさらに進化すれば、ますます新しい広告手法が登場するでしょう。とはいえ、どんなに時代が変わっても「物件の正しい情報を伝え、住まいや暮らしをイメージしてもらう」っていう本質は変わらないはずです。
次回はいよいよ最終回。海外の不動産広告との比較や、日本独自の広告慣習について深掘りしてみたいと思います。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます! 最終回もどうぞお楽しみに。
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