規模拡大にこだわらない不動産投資 小規模大家のはじめ方

第1章   コネなし知識なしの戦略

 

ちょっと本を読んだ程度で不動産投資の世界に飛び込むのは、無謀と言える。

では知識もコネもない一般人は、不動産投資で勝つことは不可能なのか。

一つ方法がある。

ニッチな領域を攻めることだ。

私が辿り着いたニッチ戦略の一つは「福祉大家さん」だ。

福祉大家とは造語で、要は精神的に病んでいる方や生活保護を受けている方など、住居確保に困っている方々を受け入れる大家のことである。

福祉大家の長所はニ点。

・競合となる大家や物件が少ないこと

普通の大家が手を出さないところで勝負するので、競合に悩まされる心配がないのだ。

・社会貢献できること

賃貸経営はボランティアではない。

しかし福祉大家は賃貸を借りることができない人、困っている人に貢献できる。

つまり社会貢献となる。

もう一つのわたしの不動産投資戦略は「小ぶりアパート」である。

小ぶりアパートとは、4世帯程度が入居できるアパートを指す。

なぜ小ぶりアパートをターゲットにしたかだが、一つは資金リスクが過大にならないことだ。

「不動産投資を始めたら思ったよりお金の支出が多い」と嘆く不動産投資家は多い。

規模が小さければそうした想定外の支出も小さくなる。

もう一つはレバレッジをかけやすいこと。

物件自体が安価なので、大きな借入をしなくともレバレッジ効果を容易に高められるからだ。

「福祉大家×小ぶりアパート」も不動産投資戦略の一つとして、ぜひ検討してみてほしい。

 

 


第2章 日本政策金融公庫を知る

 

「コネなし知識なし」で融資を受けることは容易ではない。

しかし方法はある。

民間銀行ではなく、政府系金融機関である日本政策金融公庫を利用することだ。

日本政策金融公庫を検討すべき理由は、民間より借りやすいだけではない。

日本政策金融公庫は営利だけを目的とせず、中小企業のセーフティネットとして、また、地域や国へ貢献する事業を支援することにある。

その点で福祉大家は、社会的弱者の方々や地域へ貢献できる事業だ。

つまり事業内容と日本政策金融公庫の理念が一致している。

では公庫を利用する場合、どれぐらいの期間で借入を行えば良いのか。

返済期間はなるべく長くすることをすすめる。

その上で、耐用年数を超えた物件の場合では10年ぐらいが一つの目安だ。

これ以上短くならないようにした方が良い。

次に借入額のイメージだが、初回の場合は1,000万円未満を目安にするのが妥当だ。

いくら公庫と言えども最初から1、000万円を超える金額は簡単には融資してくれない。

また投資額そのものを「小ぶり」にするのが本書の趣旨でもある。

ではその場合、自己資金はどれくらいを考えれば良いか。

基準は返済比率で、収入額の50%未満が望ましい。

仮に月の家賃収入が16万円なら、800万円を年利2%で10年返済すると月額7万3千円程度で50%未満となる。

月16万円見込める物件の売値が1,000万円なら、差額の200万円が自己資金として必要な額となる。

 

 


第3章 不動産業界を知る

 

借入イメージができたら、自分が挑戦できそうな価格帯の物件探しとなる。

その場合に大切なことは不動産会社の特色を知ることだ。

賃貸アパートを買う場合は、賃貸管理を行っている不動産会社で探すことをすすめる。

なぜなら大家がアパートを売る場合、賃貸管理をお願いしている不動産会社へ売却を頼むケースが多いからだ。

収益物件売買に強い不動産会社の方が良さそうに思えるが、それは正しくない。

新米大家は売買が成立するかもわからないので、熱心に相手にしてもらえないからだ。

また専任媒介と仲介の案件なら、専任媒介の方が不動産会社の熱量が高い。

もし専任媒介契約がない物件なら、物件の管理会社を探し出し、売買交渉を行うと良い。

次に不動産会社へ問い合わせる方法だが、福祉大家なら電話でもメールでも方法にこだわる必要はない。

なぜなら売れ残っている物件を問い合わせることが、多くなるからだ。

問い合わせる際に確認すべき事項は

・マイソク

・レントロール

・過去の修繕履歴

・売却理由

・固定資産税評価額

・入居者とのトラブルの有無

などである。

内見することになった場合、工務店に同行してもらった方が良い。

ただし、良好な関係を築くためにも、工務店の労力に配慮することが大切だ。

内見時のポイントは、実際に自分が生活するイメージを持ちながら行うこと。

そうすれば洗濯置き場や冷蔵庫のスペースが十分でなかったりしても、事前に気付ける。


売値交渉の場面で重要なことは、自分の利害を事前に整理しておくことだ。

具体的な交渉金額を整理していないまま交渉すると、その場の雰囲気で判断することになる。

例えば初期費用や利息込みで年利10%ほしいといった具体的な基準があれば、自ずと購入金額目安も算出できる。

また自分が譲歩できること、絶対に譲れないことも整理しておくことだ。

さらに売手と買手双方の利害を把握し、優先順位を付けた上で指値の交渉に臨むことが肝要である。

次に「客付け」だが、客付けで大切なことは不動産会社の気持ちを理解することだ。

福祉大家の物件は客付けを行う不動産会社にとって、次のような気持ちで見られている。

・家賃が低い=仲介手数料が低い

・ボロい案件なので即決してもらいにくい

・何人も物件を案内するのは面倒だ

・家賃が高い築浅物件の方が決まりやすいし、仲介手数料も高くなる

つまり福祉大家の物件は、客付けを行う不動産会社にとって優先順位が低いということだ。

ではどうすれば良いか。

やはりお金が物を言う。

例えば広告料を3ヶ月分にするだとか、管理料を相場以上にするなどである。

何度も案内しなければならない物件で優先順位をあげてもらうには、お金を出すことが最も効果的だ。

取引相手である不動産会社を動かすには、やはり相手の立場に立って考えることが大切である。

福祉大家は一般物件以上にトラブルに遭遇する可能性が高い。

しかし恐れることなくきちんと準備をしておけば、対応可能だ。

最も留意しなければならないトラブルが家賃滞納だ。

改めて言うまでもないが、家賃滞納に備えて家賃保証会社の利用は必須だ。

生活保護を受けている方なら、保証料も扶助の対象となる。

その他、失業や廃業で収入がなくなってしまい、家賃の支払いに困っている借主には行政の「住居確保給付金」制度を紹介するのも一手である。

自治体によって多少制度は異なるが、該当する場合は最大3ヶ月程度家賃相当額を支援してもらえる。

近所トラブルに備えることも大切である。

それには、関わってもらえる人や体制を確認しておくことだ。

・生活保護:ケースワーカー

・障害者:相談支援専門員

・犯罪歴のある人:保護司

・介護サービス利用者:ケアマネージャー など

高齢者を借主とする場合には孤独死にも備える必要がある。

その対策としておすすめなのが、家賃保証契約の保険や借主に加入してもらう火災保険に特約を付けることだ。

「家主費用補償特約」や「家賃収入補償特約」といった特約がある。

これらに加入しておくと、孤独死により部屋が汚染されたり、遺留品処分が発生したりしても、保険でカバーできる。

また福祉大家を目指すなら、福祉に理解のある管理会社を見つけ、協力を仰ぐことも大切である。

理解が乏しい管理会社だと、客付け段階で対象者を断ってしまうこともあるからだ。

良きパートナー探しは事業成功のカギだ。