現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話

第1章 手強い物件・手強いお客様の話

 

・「冷やかし」の判断は難しい

 

古い賃貸アパート住まい、無職という条件の高齢夫婦がやってきて、内見を希望してきた。

 

ローンは絶対ムリなのでやる気がしぼんだが、一括払いできる貯金があったのだ。

 

人を見かけで判断してはいけないのは営業マンの鉄則である。

 

 

・オープンハウスの悲劇

 

オープンハウスは、営業マンが悠々自適にお客様を待っている印象があるかも知れない。

 

しかし空調設備がない場合が多い。

 

真冬や真夏に長時間過ごすのは地獄だ。

 

唯一あった温水便座で暖をとって凌いだ営業マンもいる。

 

 

・売り手と買い手が顔見知り

 

売り手と買い手が顔見知りの場合、両者の関係が悪いとまず売れない。

 

そのため、居住中の物件は検討から外す人がいる。

 

しかし売主から周辺情報を聞けたり、家具配置例がわかったりとメリットもある。

 

居住中の物件でも、見学はおすすめしたい。

 

 

・占い好きもほどほどに

 

占いにこだわったり、信じたりするのは個人の自由だ。

 

しかし占い師の占いを鵜呑みにするあまり、何件物件を紹介しても決まらないお客様がいる。

 

仮に占い師が指摘する条件を全て満たした物件が見つかったとして、住む上で最良の条件とは限らない。

 

占い師に「望み通りの物件を見つけられる不動産屋」を占ってもらってから来てほしい。

 

 

・近隣住民は「普通」でも

 

「隣人や上下階の人は「普通」ですか」

 

営業マンとしてはこの手の質問が一番答え辛い。

 

事故や事件にまで至らないが、問題を起こす迷惑な隣人がいるのは事実だ。

 

また近隣住民が普通でも、売主が周囲から大変嫌われているケースもある。

 

全員普通の住人が住むマンションはなかなか存在しない。

 

 

・佐藤さん?鈴木さん?中村さん?

 

3千万円の物件に対し1千万円もの値下げを要求してきた、佐藤さんという顧客がいた。

 

先輩Aに相談すると「あのお客様は鈴木さんだ」という。

 

話を聞いていた先輩Bは「いや、中村さんと名乗っていた」と指摘してきた。

 

要は本名を告げず、営業マンに無謀な要求をして困るのを楽しむ冷やかし客だったのだ。

 

 

・嬉しいはずの「ご祝儀」だけど・・

 

不動産事業は動くお金が大きいので、後で生じるトラブルも大きくなりやすい。

 

「あの時ご祝儀を渡したのに」と言われてしまえば、解決が難しくなる。

 

営業マンはご祝儀を受け取るべきではないし、営業マンにご祝儀を渡す必要もない。

 

何のメリットもないからだ。

 

 

 

第2章 営業マンが語るここだけの話

 

・「事故物件」と不動産業者

 

オートロックがない駅近の高層マンションは、部外者による飛び降り自殺が多い。

 

部屋ではなく、共用部分での事故に対する告知義務は微妙な話だ。

 

事故について細かく書く営業マンであっても、共用部分の事件や事故については書かないことが多い。

 

「大島てる」というサイトは営業マンの間でも有名な事故物件紹介サイトだ。

 

このサイトで事故の有無を確認している営業マンも多い。

 

https://www.oshimaland.co.jp/

 

 

・不動産売買仲介業者のテクニック

 

不動産営業の応酬話法は奥が深いが、多くの場面で通用する便利な一言がある。

 

「と、おっしゃいますと?」という台詞である。

 

不動産を探しているというお客様へ「と、おっしゃいますと?」と尋ねると具体的な状況や条件を主体的に語ってくれる。

 

また、売主との交渉でチラシを使うのも有効な手だ。

 

10枚だけチラシを刷って売り主を訪ね、まず「近隣で1万枚まいた」と言う。

 

次に「これだけがんばって反応がないから、売却価格変更を検討してほしい」と頼めば価格変更に応じてくれる。

 

 

・架空のお客様

 

「○○マンションのお部屋を探しているお客様がいます」という「架空のお客様」によるチラシの広告効果は侮れない。

 

売れずに困っている売り手から、積極的な問い合わせがくる。

 

ただし、売主からすぐにそのお客様を連れてきてほしいと言われる場合もある。

 

その場合は女子事務員に架空のお客様になってもらい、同行してもらう。

 

 

・不動産営業を断る方法

 

不動産営業を断る場合、「紹介された物件のここが気に入らない」といった断り文句ではだめだ。

 

別の物件を紹介され、営業が続くことになる。

 

ウソでも「他で買った」と言えばそれで終了だ。

 

売り手の場合では「親戚が住むことになった」という言い訳が良い。

 

住むのは親戚以外でも良いが、「今は売らない」との断り文句では営業マンとの付き合いは長引いてしまう。

 

 

・不動産営業マンの給料事情

 

不動産営業マンの給料は期末までに引き渡しを終えられるかで、期内の報酬が決まる。

 

そのため、期末時の数字に対する営業マンの執着はすさまじい。

 

例えば来月引渡し予定の売り手に対して

 

「子供の学校の関係で、買い手から来月ではなく今月中に入居できないかと相談がきた」

 

一方買い手に対しては

 

「売り手が急に海外旅行に行くことになり、今月中に引渡しできないかと相談された」

 

と伝えるなどして、期内の引渡しを実現することがある。

 

 

 

第3章 不動産業界のウラ話

 

・マンションVS一戸建て

 

購入価格で言えば土地付きの一戸建てを買うより、マンションの方が初期資金を抑制できる。

 

しかしマンションは毎月の修繕積立金や管理費の支払いが、待ち構えている。

 

一戸建てなら管理費を強制される心配はない。

 

修繕も、いつどこまでやるかを所有者自身で自由に決められる。

 

ただし周辺の清掃や庭の手入れなどは、自分でやらなければならない。

 

その点で、マンションは管理会社が清掃を行ってくれる。

 

もっともその費用は管理費に含まれているし、大規模修繕となると、まとまった一時金を徴収されることもある。

 

長期的な視点で比較、検討した方が良い。

 

 

・「どこでもいい人」はどこがお勧め?

 

テレワークの普及により、昔ほど職場の近くに住む必要性がなくなってきている。

 

ではエリアを絞らない、あるいは絞る必要がない人はどんな物件がお勧めか。

 

それはずばり「将来的に売却しやすい物件」である。

 

例えば駅近にこだわらない場合でも、駅徒歩10分以内の物件を買うべきだ。

 

ネットでは「駅徒歩10分以内」で検索される場合が多く、徒歩10分を超えてしまえば多くの人の目にとまらなくなるからだ。

 

 

・不動産仲介業者の儲け方

 

仲介手数料は物件価格☓3%+6万円+消費税が上限と、法律で定められている。

 

しかしそれ以外にも儲けるテクニックがある。

 

リフォーム会社への紹介料は請負金額の10%にもなる。

 

その他は解体業者、測量、火災保険なども紹介料の対象だ。

 

 

・不動産仲介業の醍醐味「回転」

 

不動産仲介業の醍醐味は一つの物件を回転させること、すなわち売買取引を重ねることにある。

 

例えば1物件を3回売買させた場合、売り手と買い手の両方から仲介手数料を受け取ると手数料は6回分にもなる。

 

買取業者がうまく利益をのせて転売した方が、儲かる場合はある。

 

しかし不動産は景気に左右されやすく、必ず高く売れるとは限らない。

 

仲介なら価格が少々下っても、回転させることができれば儲けることができるのだ。

 

 

・家は「購入」か「賃貸」か

 

家を買うか賃貸にするかは、資金、目的、地域など、人によってそれぞれ異なるので単純比較はできない。

 

その上で「得する可能性」は「購入」である。

 

ただし新築は対象外だ。

 

資産価値を購入後に自力で上げるのが、ほぼ不可能だからだ。

 

一人暮らしなら400万円程度の中古ワンルーム購入をすすめる。

 

毎月4~5万円の家賃を支払うより月々の返済額は低いし、最終的に不動産も所有できるからだ。