不動産投資と資産管理法人 戦略

第1章 基礎編 不動産投資のメリットとデメリット

 

不動産投資のメリットは次のとおり。

 

・毎月家賃収入が得られる。

 

・家賃収入でローン返済可能。

 

・値上がり益も期待できる。

 

・値下がりしても追加担保など求められない。

 

・物件を担保にできるのでレバレッジがきく。

 

・工夫次第で物件からの収益性を高められる。

 

・節税しやすい。

 

 

不動産投資にはデメリットもある。

 

・投資時にまとまった資金が必要。

 

・流動性が低い。

 

・金利上昇リスクがある。

 

・空室や家賃滞納、賃料低下といった運営時のリスクもある。

 

・災害や事故に巻き込まれる可能性もある。

 

・価格下落時に売却し残債が上回る場合、残債分の資金が必要。

用意できない場合は売却できなくなる。

 

・細かい分割がしにくい。

 

 

 

第2章 人口の推移とキャップレート

 

不動産は人を相手にした貸家「業」である。

 

国内各地における人口推移の把握が不可欠だ。

 

転入超過とはその地域から出てゆく人より、転入者が多い状態を表す。

 

転出超過はその逆で、転入者より出てゆく人の方が多い状態のことだ。

 

東京は95年から20年にかけてずっと転入超過が続いた。

 

一方名古屋や大阪は、8年連続で転出超過状態になっている。

 

日本全体では人口が減少しているが、その中で東京と神奈川は突出して転入超過数が多い。

 

人口が多いということは借り手が多いということだ。

 

なるべくリスクが低い地域を前提にすること。

 

その中のどのエリアへ不動産投資するかが、重要なポイントになる。

 

 

 

第3章 不動産の儲けを表す利回りって何?

 

不動産の利回りの計算方法はいろいろある。

 

表面利回りは空室状況を無視し、満室想定賃料で収入額を出し、物件購入価格で割り戻した値だ。

 

表面利回りだけで不動産の良し悪しを評価するのは、危険である。

 

なぜなら不動産には空室損、広告費、入退去に伴う管理費、共用部の光熱費、修繕費、税、保険料などさまざまな経費がかかる。

 

空室損や必要経費に基づいた実質利回り(FCR)で判断することが大切だ。

 

また「利回り」はリスクの裏返しでもある。

 

要はその利回りでないと買う人がいないということだ。

 

必ずしも利回りは高ければ良いというものではない。

 

 

 

第4章 投資分析を徹底的に理解する

 

不動産投資に取り組むなら「不動産の収益構造」と「投資指標や共通用語」の二点に対する理解が大切だ。

 

基本となるのが「キャッシュフローツリー(CPM流投資分析)」である。

 

キャッシュフローツリーを構成する共通用語と、その関係式は次のとおりだ。

 

GPI(潜在層収入)-空室・未回収損=EGI(実行総収入)

 

EGI-OPEX(運営費)=NOI(営業純利益)

 

NOI-ADS(負債支払額)=BTCF(税引前キャッシュフロー)

 

次に投資家の期待利回りを「キャップレート」と呼び、

 

営業純利益(NOI)÷取引価格

 

で求める。

 

また、投資の収益性と安全性を数字で判断するために、9つの指標がある。

 

K%(ローン定数)

 

FCR(総収益率)

 

CCR(自己資本配当率)

 

PB(自己資本回収期間)

 

DCR(負債支払安全率)

 

BE%(損益分岐点)

 

LTV (ローン資産価値比率)

 

NPV(正味現存価値)

 

IRR(内部収益率)

 

 

 

第5章 実務編 想定できるあらゆるケースに対応可能な実践例

 

新築区分所有マンションは仲介手数料が不要の場合が多い。

 

新築ゆえほぼ融資で買え、売却もしやすい。

 

しかし購入した時が価格のピークで、売却損が出やすい。

 

効率的に資産拡大するなら、価格が高い新築区分所有マンションは避けた方が良い。

 

区分所有マンションは中古が鉄則だ。

 

しかし融資を受けづらい、利用制限がある、空室リスクが100%かゼロになるなどデメリットもある。

 

1棟か区分所有かは向き不向きもあるので、慎重な判断が必要だ。

 

また、収益構造の改善には「借換え」という手段もある。

 

単純に利子の大小だけでなく、返済期間の長短でも収益構造が変わってくる。

 

この点は物件や属性によって銀行の対応は異なる。

 

物件と自分、銀行の相性をよく探ることだ。

 

また、物件探しの前に事前審査によって融資先の当たりをつけておくことも大切だ。

 

なお、融資実行直後の転職や退職は避けるべきである。

 

 

 

第6章 不動産売却の流れと知っておいて欲しいこと

 

不動産売却で大切なことは、代替え投資と比較できるようになることだ。

 

具体的には、物件を売って税金を払い、手元に残った資金でどのような投資が可能かを試算しておくことである。

 

また、気づかない人が意外に多いのが、含み益の自然増だ。

 

購入時の価格より現在の売却価格が上回っている状態のことだが、物件によっては所有せずに売却し、組み替えた方が良い場合もある。

 

そうした判断が、資金のより効率的な運用につながるのだ。

 

 

 

第7章 住宅の住み替えで投資資金をつくる

 

もし現在の住宅に住み続けなくとも良く、売却価格がローンの残債を上回るなら、住み替えを検討しよう。

 

それで投資資金を作ることができる。

 

まず家を売却し、現金を手にする。

 

その一部を頭金として、住み替え住宅を長期の低金利ローンで月々の返済額をできるだけ抑制する。

 

次に残りの現金を頭金にして融資を受け、1棟アパートや中古マンションなどを購入する。

 

そうすれば家賃収入で住宅ローンが賄え、且つ儲けまで出せる場合がある。

 

こうした組み替えでも、収益をもたらす不動産を資産へ編入することは可能なのだ。

 

 

 

第8章 この空き家、貸すべきか売却すべきか

 

空き家、空き地の活用法は一つではない。

 

次のような選択肢がある。

 

・現存のままで貸し出す

 

・リフォーム後に貸し出す

 

・賃貸用アパートやマンションに建て替える

 

・そのまま売却し資産を組み替える

 

・貸しながら共同担保にする

 

これらはの選択肢は全て想定される数字で評価が異なり、一概にどれが良い、悪いとは言えない。

 

その上で、アパートやマンションに建て替える場合、収益還元評価では更地より市場価格が下落する場合もあるので注意が必要だ。

 

また、どれを選択にするにも「出口(売却)」価格まで想定した上で判断することが大切である。

 

 

 

第9章 法人活用編 不動産は個人保有にすべきか 法人保有にすべきか

 

法人化した場合、年800万円以下の不動産収入であれば実効税率は23.17%。

 

対して個人は5%~45%の7段階区分による累進課税方式で、個人負担は増える傾向にある。

 

また資産管理法人には次のようなメリット・デメリットがある。

 

メリット

 

・配偶者を役員にすることで所得分散可能

 

・繰越欠損金の10年間繰越可能

 

・減価償却の任意計算が可能

 

・死亡退職金を非課税枠で活用できる

 

・経営セーフティ共済掛け金を損金化できる上40カ月超で全額戻ってくる

 

・役員社宅の活用が可能

 

デメリット

 

・団信の債務免除額に課税される

 

・個人にはない均等割り負担がある

 

・簡単に精算できない

 

・社会保険料の負担がある

 

 

 

第10章 資産管理法人の設立

 

会社の種類として、資産管理法人としては株式会社か合同会社が一般的だ。

 

株式会社は役員任期があり、改選ごとに登記費用がかかる。

 

また株式会社は出資者と経営者は別々で良いが、合同会社は出資者と経営者が一体となる。

 

コスト面では合同会社の方が安い。

 

しかし相続税対策を考えるなら、出資者と経営者を分けられる株式会社の方が良い。

 

次に資産管理会社の形態だが、所得分散効果が高いのは不動産を法人に所有させる方式だ。

 

一方既に個人で不動産を所有しているなら、サブリース方式による所得分散が望ましい。

 

不動産投資の成否は課税額でも左右される。

 

将来所得が増えそうなら最初から法人化して運用すべきだ。

 

 

 

第11章 相続対策としての資産管理法人の活用

 

現金1億円を相続した場合、相続税評価額は1億円である。

 

その点で土地の相続税評価は時価の約8割程度。

 

建物の場合は固定資産税評価額が基準となり、約7割程度で評価される。

 

つまり現金を不動産に変えることで評価額は約3割減る。

 

それを賃貸にすれば5割になり、さらに小規模住宅地の特例を受ければ6割以上評価額が減る。

 

しかし相続対策で最も効果的なのは法人化だ。

 

法人にすることで、個人と法人へ所得を分散できる。

 

配偶者や子に役員報酬を支払うと、さらに所得の分散が図れる。

 

ただし法人の場合、不動産取得後3年は取得価格での評価となるので、相続発生間際の法人化は避けるべきだ。