自宅・投資用・相続 損しない不動産売却
第1章 不動産売却ステップO:事前売却準備
不動産売却において本当に大切なのは売却の前段階。
つまり「ステップO」である。
準備不足のままだと不動産会社の描くストーリーに乗せられ、売却話が進んでしまう。
ステップOで特に大切なのは売りたい不動産の特徴、特色を知ることだ。
そもそも本当に売る必要があるのか、改めて考えを整理しておこう。
簡単な検討で売ることを決意した場合なら、いきなり売るべきではない。
仮に物件に入居者が付かないから売却したいという場合は、リフォームなどにより入居者がつく物件に変えられる可能性がある。
現状を細かく分析し、もっと高く売れる要素はないかを徹底的に考えるべきなのだ。
こうした下準備こそが、物件を売り出す前に極めて大切である。
売却を決意する上でもう一つ大切なことが、ゴールイメージを明確に持つことだ。
具体的には「納得感のある価格で、売りたい時期に売ることができる」というイメージである。
その際「この価格では絶対に売らない」という最低価格を決めておくことも重要な点だ。
では少しでも高く売ることを目標に、どのような売却戦略を描けばよいかだが、ポイントは二つある。
・できるだけ時間的な余裕を持つこと
物件認知度が広がるまで、どうしても時間がかかってしまう。
余裕がないと、焦りから安易な価格で売り急いでしまうからだ。
・相場をネットと自分の足で知ること
不動産の相場を調べるならネット検索は当然だが、それだけでは不十分だ。
不動産業者にあたり、自分の足と目で相場観を掴むことも大切である。
また、自宅と投資用物件では高く売却する上でのポイントが異なる。
・自宅:ファミリーが内見で多いため掃除をしっかり行っておくこと
・投資用物件:買手がどの程度の知識を有しているかを踏まえ、情報はできるだけ小出しにすること
第2章 不動産売却ステップ1:不動産会社への相談・選択
不動産会社の仲介は、契約更新できるかを見定める期間として「3ヶ月」が一つのスパンとなっている。
仲介会社にしてみれば、物件が3ヶ月間売れなければ、その間手数料はゼロとなるからだ。
そこで多くの不動産会社は「1ヶ月」で決着をつけたがることを知っておこう。
1ヶ月経過しても売れない物件は、「これ以上の値段は付かない」などと言って売主を納得させようとする。
営業マンの話が全部ウソとは言えない。
が、急いで売却させる方弁の場合も多いのだ。
だからこそ、売主は時間的な余裕を確保しておくことが大切である。
ではどのような不動産会社を選ぶべきなのか。
まず大手不動産会社の場合、売手、買手両方の仲介をしたがる。
仲介手数料が倍になる「両手取引」となるからだ。
そのため、大手は自分達で見つける買手しか紹介しない傾向がある。
そうなると売却の機会損失につながることもある。
よって大手にこだわる必要はない。
ただし対策もある。
どのように買手を探すのか、しっかりとヒアリングすることだ。
例えばレインズに物件を載せるのか聞くことも、一つの方法である。
レインズは不動産業者だけが閲覧可能な情報共有サイトなので、そこに掲載するなら買手を広く探そうとしている証拠だ。
つまり不動産会社選定で大切なのは規模の大小ではない。
何を専門にしているかだ。
売買仲介専門であれば良いと言う訳でもない。
売却物件でも投資物件に強い、あるいは住宅に強いなど得意、不得意がある。
自分が売却する物件の種類に合わせて、その種類の売却を得意としている不動産会社を探そう。
他には
・希望通りの売り出し方に対応してくれるか
・どのような問い合わせがあっても自分へ連絡してくれるか
このニ点への対応度合いもしっかりと見極めておくことが大切だ。
尚、一般媒介が良いか、専任媒介か、専属専任媒介かは一長一短がある。
信頼できる不動産会社へ専属専任媒介で依頼しても結果が出なければ、3ヶ月程度で契約を解除し、他をあたるようにしよう。
第3章 不動産売却ステップ2:販売活動開始
不動産会社が決まれば、本格的な売出しのステップに入る。
まずは「テストマーケティング」を行うことだ。
相場や希望価格より少し高めの価格設定で売り出し、探りを入れるのがコツである。
その反応を見て価格を修正し、本格的な売り出しへ取り組むという流れが良い。
もう一つのコツは、最初から不動産売買のポータルサイトへ掲載しないこと。
最初は不動産会社だけが閲覧できるレインズだけに掲載することだ。
もしポータルサイトへ掲載して売れない状態になった場合、「売れない物件」というレッテルを貼られてしまう。
そうなると、安値でしか売却できなくなるからだ。
また、担当の営業マンにはどのような問い合わせがあっても必ず連絡入れてもらうよう依頼しておくこと。
そうしないと不動産会社任せになってしまい、都合の良いように情報操作される可能性がある。
「マイソク(チラシ)」に注意を払うことも、売却を成功させる上での鉄則だ。
間取り図が載っていないなど問題外である。
マイソクにはできるだけ写真があった方が良い。
できれば地図や周辺環境を紹介する画像、情報なども掲載することが望ましい。
例えば自宅を売却する場合、ファミリーにとって学校からの距離は、大変重要な情報になる。
あるいは単身者用のマンションやアパートなら、駅からの距離以外にも最寄りコンビニの位置情報も喜ばれる。
次のポイントは買手から指値を受けた、つまり価格交渉となった場合だ。
そこで重視すべきことは「納得感」である。
もし金額的に納得できる水準でなければ、その理由とともに申し出を断ることが大切だ。
買手も「安く買えればラッキー」程度の思惑で、安い価格を提示することが多い。
安易に妥協するべきではない。
また、不動産会社は「高く」売ることより「早く」売ることを優先することも忘れてはいけない。
「このタイミングで決めるべきだ」と言って決めさせようとする場合がある。
その場合も、最初に決めた売却金額を堅持することが大切だ。
第4章 不動産売却ステップ3:契約と引き渡し、確定申告
不動産売却は「契約したら終わり」ではない。
最も注意しなければいけないのが、自宅の売却などで買手がローンを組む場合だ。
買手事情で売買契約を白紙にする場合、手付金を放棄するのが一般的である。
そうなれば仮に契約が白紙になっても、手付金が売手に入る。
ところがローンで審査に通らなかった場合には、自動解約となってしまう。
この場合、手付金も買手に戻ってしまうのだ。
相手がローンを組む場合、リスクが生じることを忘れてはならない。
では買手のローン審査も通り、売却代金も受け取れ、物件の引き渡しを迎えることができたとする。
この場面でまだローンが残っている場合は、返済手続きが必要である。
またローンに伴う抵当権の抹消登記や、所有権移転手続きを司法書士へ依頼することも忘れてはならない。
このタイミングで用意しなければならない書類は想像以上に多い。
思わぬ漏れやミスで、契約が破綻してしまっては元も子もない。
時間に余裕を持った上で、必要書類の準備や手続きを行うようにしよう。
では売却手続きが無事に終われば、やっと落ち着くことができるのか。
売却の結果、もし利益が出た場合には確定申告を通じ、譲渡所得税の納税をしなければならない。
もっとも自宅や相続物件の売却であれば、様々な優遇税制があり、特定の控除が受けられる。
利益が出ても控除額の範囲内であれば、譲渡所得税はかからない。
ただし、そうした優遇措置を受けるためにも確定申告は必要だ。
一方、投資用物件は優遇制度は殆どないと考えて良い。
とくに厄介なのが、翌年の確定申告時に譲渡所得税がかかってくるケースが多いことだ。
つまり売手が忘れた頃に、税金の支払いを求められる。
「忘れた頃の譲渡所得税・住民税」という言葉を覚えておくことをすすめる。
自分を守るには、こうした知識を仕入れておくことも重要である。