ヒアリニング不動産投資
第1章 不動産投資の成功は「ヒアリング」で決まる!
時間的余裕のないサラリーマンは、不動産投資を効率的に行いたがる。
その結果、現地調査でのヒアリングを削減してしまう傾向にある。
しかし不動産投資は良くも悪くも原始的だ。
特に地方では「横のつながり」が重視される。
ヒアリングは物件購入可否の判断だけに行うものではない。
「横のつながり」を築くという重要な役割がある。
また他の投資家との差別化という点でも、特に現地でのヒアリングには大きな意味があるのだ。
ヒアリングは不動産投資において最も重要なプロセスと言って良い。
3年から5年、または10棟ぐらいはヒアリングを重視すること。
つまり人間関係を作ることに力を注ぎ、事業の効率化はその後で良い。
ではなぜヒアリングが大切なのか。
不動産投資家は物件購入前にシミュレーションを行う。
しかしそれは「想定」に過ぎない。
シミュレーションも大切だが、物件を満室にするための難易度はヒアリングでしか把握できない。
逆に言えば、シミュレーションでは自身の基準をクリアしていなくとも、ヒアリング結果によっては購入して良い物件が存在するということだ。
そういう物件は金融機関も積極的に融資してくれる場合がある。
物件を買い進められてない人は、ヒアリング能力が低いと言って良い。
不動産投資の成功はシンプルな図式で成り立っている。
行動すれば「説得力」が伴い、それが伴えば交渉がうまくゆく。
「交渉力」がある人は、良い物件を買い進めることができる。
この循環を作るため、正しいヒアリングを行おう。
第2章 物件を購入する前のヒアリング
■現地調査
現地調査はヒアリングの武器となる。
現地調査を行い、自分の目で物件を確認すればヒアリングの「基準」ができる。
例えば自分では「汚い」と感じたのに、物件担当者が「きれい」と言っていたとする。
「その担当者の基準は自分より低い」と判断できるのだ。
では具体的に何を確認すれば良いかだが、次の10項目があげられる。
・近隣の入居率
・可能であれば入居者へのヒアリング
・駅、公共施設までの距離
・駐車場の台数(外部で借りられる場合も含む)
・地形
・構造躯体の状況
・間取り
・設備
・部屋の広さ
・入居偽装の有無
■仲介会社へのヒアリング
仲介会社のヒアリングでは「満室になるか?」の問いはNGだ。
責任を取りたくない仲介会社は「難しい」と回答することが多いからだ。
大切なことは言葉を引き出すテクニックである。
満室になるかではなく、なる条件を聞くのだ。
■管理会社へのヒアリング
どんなに利回りが良い物件でも、パートナーとなる管理会社がなければ購入すべきではない。
管理会社選びのポイントは「向こうから提案してくれるか」である。
例えば満室の条件をヒアリングしている際、「エアコンを2台付ければ決まる」といった具体的な改善策を提案してくれるかどうかだ。
もっとも、管理会社の選定ミスは命取りにならない。
契約をやり直せば良いだけだ。
■金融機関へのヒアリング
金融機関は敵ではなく、パートナーであり相談相手と考えるべきだ。
ヒアリングする前に、自分の経歴書と自身の金融資産一覧を送っておこう。
まず金融機関との信頼関係を築くことが先決だからだ。
また、既に取引している金融機関に対しては定期的に訪問し、正確なキャッシュフローに基づいた事業状況を説明すると良い。
第3章 物件別ヒアリング事例集
この章では筆者のヒアリング事例と言うより、購入物件に対して生じた問題点とその対策が紹介されている。
そこで同章から三例をピックアップして紹介する。
■想定外の入居率ダウンと対策
管理料3%、広告料は2ヶ月分で、他店舗が客付けした場合はさらに1ヶ月分プラスの好条件で募集したにもかかわらず、空室は増える一方だった。
そこで管理会社の担当者とともに、仲介店への営業回りを行った。
その結果、管理会社による物件の周知力の低さが原因と判明した。
その後は仲介会社の客付け協力も得て、物件の周知も進み、満室経営を実現できた。
■評判が悪いのに満室経営可能に
ヒアリングしたところ、間取りが悪く立地評判もあまり良くない物件だった。
しかも競合物件も多いという。
しかしこれまでのヒアリングや運営経験を踏まえて投資。
まず室内と共用部のリフォームを行い、相場が1~2ヶ月だった広告料を3ヶ月分にした。
すると満室になったが、成功要因はそれだけではない。
成約数をもとに月1度程度、管理会社とミーティングを行った。
成約率が低い場合は原因と対策を考え、それが正しいかを近隣仲介店にヒアリングして裏付けをとった。
こうした大家の本気度が、管理会社へ仲介会社を本気にするのだ。
■ヒアリング禁止物件の対策
ヒアリング禁止の理由は大きく二つある。
一つは情報拡散を仲介会社が防ぐ目的。
もう一つは売手の事情だ。
法人など、物件を手放すとなると悪い噂が立ちかねないからだ。
しかしそうした場合でも手はある。
例えば賃貸専門会社を訪問し、ヒアリングを行うのだ。
その際、ヒアリング禁止物件のエリアや築年数など、条件だけ揃えて質問すれば賃貸需要を聞き出すことができる。
さらに信頼関係を築ければ、正直に事情を伝えても良いだろう。
第4章 物件別ヒアリング事例集(再生物件編)
この章では著者が実際に運用した再生物件の事例を、第3章同様、問題点や対策などを紹介している。
■離島の再生物件
島内ではそこそこ良い立地だが、狭小で三点ユニット、ベランダなしの悪条件だった。
しかし、近隣物件の入居率や募集条件、室内状況等をリサーチし、購入に踏み切った。
しばらくは客付けがうまくゆかなかったが、仲介会社へのヒアリングで敷地内駐車場の数が足りないこと、家電ニーズが高いことがわかった。
それらを導入すると4ヶ月程度で満室を実現できた。
■大規模の再生物件
人口9千人の自治体エリアに8千平米もある大規模物件で、購入前は50室も空室があった。
ところがヒアリングの結果、満室にできた。
この物件は近隣へのアクセスが良い上、家賃も安く競合が存在しなかったからだ。
空室理由は高齢の管理人が仕事が増えないよう、案内を拒否していたこともわかったからだ。
■ハト物件
名称通り大量のハトが住みついていた物件だった。
その物件エリアは、ヒアリングによって賃貸需要の強さを把握している得意なエリアだった。
自分が強いエリアであれば、どのくらいの家賃でどの程度のリフォームを行えば、どれくらいで満室にできるかをスムーズに予測でき、実際にそうなった。
第5章 実際に使える! ヒアリングデータベース
ヒアリングの心構えは次の4つだ。
・知ったかぶりをしない
・聞く相手を間違えない
・「効率化」しすぎない
・目先のリスクだけにとらわれない
リスクばかりが耳に入るとそれにフォーカスしてしまい、思考停止に陥ってしまう。
特にヒアリング能力が低いうちは、ネガティブな質問をしがちなので注意が必要だ。
次に、ヒアリングで絶対に質問すべき事項は、次の5つだ。
・現状で満室になる家賃はいくらか
・リフォームを入れるとどうなるか
・広告料を○ヶ月にしたらどうか
・敷金、礼金はどれくらいもらえるか
・広告料は100%渡してもらえるか
最後の広告料の質問は他社との「横のつながり」を把握するためだ。
100%渡さなければ、客付け協力会社側は消極的になる。
また、本当に100%渡るかは裏付けとして協力会社側にもヒアリングすべきだ。
■質問1:現地に行っても空室が埋まらない場合
そもそも現地調査のやり方が間違っている可能性がある。
現地調査で大切なことは、空室の原因を調べることだ。
■質問2:地方と都市部の管理会社の違い
違いはほとんどない。
大切なことは「横のつながり」だ。
それがないと客付けがうまくいかない。
■質問3:エリア内に管理会社が1社しかない場合
ヒアリングで慎重に判断すべき。
信頼できないと判断したら、エリア外の管理会社も候補に入れると良い。